1 現金を不動産にした場合

自分の残す財産。できれば受け取る相手に少しでも多く受け取って欲しい。税負担は少ない方が良い。「相続したのに、こんなに税金にとられてしまった」と嘆く相続人の姿は見たくない、というのが本音ですよね。ここは遺産にかかる相続税の制度や仕組みを知って、賢く財産を残す準備をしましょう。
 財産と一口に言ってもその中をみると、よくあるケースが現金、預貯金、有価証券などと、土地や家屋といった不動産でしょう。今回はそのうち最も頻度が高い、現金と不動産のどちらを相続する方が節税になる=より良い相続になるのか、を見ていきます。
 まず基礎知識として、相続税を計算する際に相続税の課税対象となる「相続財産の額」(=「評価額」)をどのように計算するのか?という点を抑えておきましょう。
それは下の2点にまとめられます。
1、現金や預貯金、有価証券類は、時価と同額の評価額になる。(=有価証券は額面ではない、現在の取引価格)
2、不動産(土地、家屋)も取引価格よりも低い額となる。(=実勢価格ではない)
ここのポイントは、相続税の課税対象となる評価額は、現金類はその時点での価格ですが、不動産の場合はその時点での価格(=実勢価格)ではないことです。
このように現金を不動産にしておくと、相続税の対象となる「相続財産の額」そのものを変えて節税をすることができるのです。
参考:国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4105.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/zaisan301.htm

2 現金を不動産にするメリット

それでは不動産の場合は、どのように相続税の対象となる額(=「評価額」)を計算するのでしょうか。
宅地・家屋の評価額は一般的に次のように計算します。

不動産(宅地・家屋)の評価額
宅地の場合 路線価または倍率方式(固定資産税評価額)を元に算出します。路線価は、一般的に時価の80%、固定資産税評価額の70%で評価されます。
家屋の場合 固定資産税の評価額をもとに計算されます。時価の70%程度で評価されます。

このように、現金類はその時点での価格が丸ごと課税の対象金額になりますがが、不動産の場合は時価よりも低く、時価の70%から80%で評価されて「相続財産」の価格が決まるのです。そのため現金を不動産にしておくと、結果的に相続税そのものを減らせるというメリットがあります。
参考:国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm

3不動産を現金にした場合(?現金を不動産にした場合、では?)

では次に、現金を不動産にした場合の取得価格と相続税をみましょう。
ここでは仮に状況を設定して、実際に計算をしてみます。
<設定>
相続人:AさんBさんの兄弟。既にお母さんを亡くしています。この度、お父さんも亡くなりました。AさんとBさん以外に法定相続人はいません。遺産は法定相続どおりに相続することをお互いに合意しています。
被相続人:AさんとBさんのお父さん。
遺産:1億円の現金を使って①家屋を買った ②土地を買った
それぞれの場合を比較してみましょう。

まず基礎知識として抑えておきたい点は、遺産相続にあたり、課税対象になる額(=「取得額」)を計算するために、基礎控除額というものがある、ということです。
基礎控除額=3000万円+600万円×相続人の数
です。
この基礎控除は、遺産が現金の場合でも、不動産の場合でも同じです。

残されたもの 購入金額 評価額 基礎控除額 2人の取得額 1人あたりの取得額A
1億円 1億円の70%、7000万円 3000万円+(600万円×2)=4200万円 7000万円―4200万円=2800万円 1400万円
土地 1億円 1億円の80%、8000万円 3000万円+(600万円×2)=4200万円 8000万円―4200万円=3800万円 1900万円

このようにAさんBさんそれぞれの取得額が決まりました。
それではこの取得額を基に、相続税を計算しましょう。

各人の取得金額が1000万円以上3000万円以下の場合、
相続税は税法定相続分に応じた取得金額 × 15% − 50万円 となります。
取得額は上の計算表の最後、Aと同額ですね。

物件 1人あたり取得額A 相続税額 2人合計の相続税額
1400万円 1400万円×15%
-50万円=160万円
320万円
土地 1900万円 1900万円×15%
―50万円=235万円
470万円

参考:国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm

4 現金の場合

では現金で相続した場合はどうでしょうか。設定の基本は3と同じで、相続するものが現金に変わるだけです。

内容 金額 基礎控除額 2人の取得額 1人あたり取得額
現金(有価証券を含む) 1億円 3000万円+(600万円×2)=4200万円 1億円―4200万円=5800万円 2900万円

そして相続税を同じように計算します。
こちらもやはり取得額が1000万円以上3000万円以下なので
相続税は税法定相続分に応じた取得金額 × 15% − 50万円 となります。

物件 1人あたり取得額A 相続税額 2人合計の相続税額
現金(有価証券を含む) 2900万円 2900万円×15%
-50万円=385万円
770万円

参考:国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_4.htm

5 現金よりは不動産の方が節税できる

上記3と4を比較すると、以下のようになりました。

相続したもの 金額 1人当たり相続税額 2人合計の相続税額
家屋 1億円 160万円 320万円
土地 1億円 235万円 470万円
現金 1億円 385万円 770万円

相続した金額は全く同じなのですが、相続したものが現金のままと家で比較すると、2人合計で税額が450万円、また現金と土地の比較では同じく300万円違うことがわかります。同じ遺産であれば、不動産の場合と現金の場合では、相続税額が大きく異なることがお分かりいただけるでしょう。
 このように遺産として現金(有価証券を含む)よりは、不動産を残す方が相続税額を小さくできます。つまり遺産は不動産として残す方が、節税効果が高いのです。ただし、遺産の全てを不動産にしてしまうと、相続税や登記費用などを賄うことができないので、その点は注意が必要です。

6 まとめ

遺産。同じ金額を残すのに、それが現金類か、不動産かによって、こんなに相続税が変わるのは驚きですね。せっかく残すのであれば、できるだけ相続人に価値を損なわずに残したいもの。節税効果が高い不動産を中心に残す方が、相続人にとってはありがたい、といえるかもしれません。またその際には相続税の支払いに充てられる程度の現金類を残してあげられれば、ベストな遺産内容と言えるでしょう。