なぜ相続トラブルが身近で、よくある話になるのか

財産が多い家は遺産や相続問題でトラブルが多いイメージがつきませんか?平成27年の司法統計によると相続関係で調停をした件数は14979件です。その内訳を見てみると相続財産5000万円以下の家族では75%、相続財産1000万円以下の家族では32%になっています。

相続財産5000万円以下の家族では全体数のうち75%もの家族が調停をしていることに驚きませんか?この相続に関連する調停件数は年々増加していて他人事では済まされなくなってきました。
では、なぜ相続トラブルが身近で起きるのでしょうか。相続で大切なことは「被相続人(故人)の意思を尊重すること」です。平等に分けるのが相続というわけではありません。被相続人も人間で感情があります。いくら子供といえど平等に分ければ良いというものでもありません。

また、実際全財産を見てみると全員で分けるとそこまでの金額になることが多いですよね。また旧民法で規定されていた「家督相続制度」の名残が残っていることがあります。
家督相続制度とは長男が家族全ての土地や財産などを相続するというものです。現在は民法が新しくなり法定相続で平等に分割させることが一般的になってきています。
この新しい民法で平等に相続する。平等に財産を分与するというのが身内でトラブルが起きる要因になっているのです。

生前は家族の誰もが相続財産について口にしない

家族内で生前に親へ財産の話をすることは少ないですよね。なぜか暗黙の了解のようになっています。財産に関してのコミュニケーションをしっかりと生前のうちから取っておくことが必要です。財産についてコミュニケーションをしっかりと取っていると相続について事前にトラブルが起きることを察知できるだけでなく、トラブルを回避することもできます。

財産を相続する上で意外にもトラブルになるのは親が相続でトラブルになることを理解していないことが原因としてあげられます。そのことは後で紹介しています。
親には生前に意思を口頭で伝えてもらうことも必要です。さらに遺言書などを残してもらいその意思を明確にしてもらうことで相続に関するトラブルを回避できます。

ご両親は意外と相続で揉めごとが起きると思っていない

親が亡くなった後には迅速に相続人を決める必要があります。相続人の選定が住んでも相続財産を平等に分けることは難しい場合がほとんどです。これは財産をいくらにすれば子供や配偶者へこれだけ残せると言って財産を残しているわけではないので仕方がないことです。

親世代の方は子供たちが揉め事を起こさないと安心仕切っていないで遺言書や子供たちの希望などできるだけ生前に相続についてコミュニケーションをとるようにしておきましょう。

相続する側は「自己主張」と「問題の先送り」をする

相続人が決まっても相続人は大きく分けて2タイプに分かれます。「自分の意見ばかりを述べて損得計算をしている人」と「周りの顔色ばかり気にして円満に笑顔で相続の話をする人」です。
自己主張ばかりの人は自分の取り分を気にし、他の人の相続についても指摘を繰り返す人です。周りの顔色を伺う人は結果的に話あいをすることなく時間だけが先延ばしになってしまう可能性があります。

自己主張が激しい人の配偶者は取りまとめようとする傾向がありますが第三者が口を出したところで何もまとまりません。さらに話し合いをする人は時間が先延ばしになってしまうので借金など無駄な相続を回避したい時に時間が経過してしまい相続放棄ができなくなる可能性があります。

実際に揉めて困った身近な相続トラブルの事例5

①第三者が口を挟んだことでまとまらない

どうしても身内同士で財産分与などで揉めていることは良いことではないです。そのため解決しようと奥様や義理の家族が仲裁に入ろうとしてくれることがあります。しかし、言ってしまえば赤の他人から「家族なんだから」と言われても話はおさまるはずがありません。逆に火に油を注いでいるようなものです。
誰々が一番故人の介護をした。世話をしたということまで第三者から言われるようなことになると話がまとまっても振り出しに戻ることさえ可能性としてあります。

②スケジュールの考え方が異なってけんかになる

親が亡くなった後に意外にもトラブルの原因となるのはスケジュールの考え方の不一致です。相続には期限もあり、良い相続ではなく借金など相続放棄できるものでも期限を過ぎてしまうとできなくなってしまうことがあるのです。
スケジュールの考えが違う場合、遺産分割の話が進まないこともあり相続人同士での争いが起きやすいです。こう言ったトラブルを避けるためにも四十九日法要を目安に相続の話を決めようと事前に話あっておくと円滑に話が進みます。

③同居・介護は実家を相続できることにはならない

親の面倒を見ていれば相続が優先的に行われると思われる人がいますがそうではないです。同居や介護をすることは家族の暗黙のルールです。旧民法の家督相続では長男が全てを相続する代わりに親の面倒を見ることが条件でした。その家督相続の名残で現在も親の面倒を子供が見る風習が残っていました。

④兄弟が受け取った財産の差は意外に考慮されない

兄弟でも財産の差が生まれることがあります。相続面で見れば金額的な相続は1/2ですが土地や家など分けることができない財産が入ると兄弟間でも相続に差が生まれてしまいますよね。
しかし、相続をする際には今まで気にもしてこなかった生前の費用も話題に挙げるのが相続です。例えば子供たちの出身学校を見てもそうです。極端な話ですが私立医学部と国立大学・高校卒業では学費の面で大きく違ってきますよね。私立医学部に通った人は学費にものすごいお金をかけてもらっていますが、国立大学や高校卒業で働いている人は学費としてそこまで援助をしてもらっていません。今まで親から支払ってもらった金額は相続をする際に全然関係しないのです。

⑤相続人が複雑で想定と違う

被相続人が離婚していたり、配偶者が複数人いて人間関係が複雑になっていると相続をするにも想定と違うことが多いです。現在配偶者がいる場合は必ず相続人になりますが子供がいる場合は子供も相続人になります。

まとめ

相続で意外に多いトラブルは身近にあります。その原因は家庭環境の複雑化や相続人たちの考え方の違いなど様々ですが一番の問題は被相続人と相続人で生前に相続についてコミュニケーションをとることができていないからです。
生前に遺言書をしっかり描いてもらい誰にどれくらい相続させると話し合う必要があります。
被相続人が多額の借金を抱えていた場合、相続放棄をすることで被相続人名義の物件や不動産は放棄されますが借金も相続する必要がないです。
他にも相続トラブルの中には被相続人と生前同居していたことや介護をしたなど自己中心的な主張や勘違いなどから悪化することもあります。
相続トラブルで調停を起こしても家庭裁判所は分割法定相続分で分けることを勧められます。結果として申し立てをしても弁護士費用や諸費用で余計費用がかさむことがあります。

相続はいつか皆さんに降りかかる話です。その時に相続人同士で揉めないためにも相続が発生したら先延ばしにせずにできるだけ早期に解決するようにしましょう。とりあえずで相続をしてしまうとその先の孫やひ孫世代で揉めるリスクがあります。
もし相続で揉めそうなことがあれば弁護士などに間に入ってもらい円滑に解決するようにしましょう。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。