※こちらの記事の内容は法改正により一部変更された内容が記載されている点があります。 修正された内容はコチラ「相続法の改正で、変更されたポイント」をご覧ください。 |
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そもそも、相続法とは
この記事では「相続法改正」について詳しく説明していきますが、そもそも「相続法」とはなにを指しているのでしょうか。
文字どおりであれば、「相続法」という法律があるような印象を受けるかもしれません。実際には、民法第五編の「相続」という項目で、相続に関係する法律が定められています。この法律をまとめて、相続法と呼んでいます。
民法は、市民の日常生活に関することを定めた法律で、次のような構成です。
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一般に、総則と物権、債権は「財産法」と呼ばれたり、親族と相続は「家族法」と呼ばれたりしています。
相続が発生するときは、たいていの場合、ある人物が死亡し、死亡した人物の権利や義務などが他の人に受け継がれるタイミングです。つまり、相続法は、家族の問題と、財産の問題にまたがる場合が多いといえます。
相続というと通常は財産を受け継ぐものだと考えられがちですが、受け継ぐものには財産などの権利のほかに、義務も含まれることを忘れてはなりません。義務というのは、例えば、死亡した人が抱えていた借金なども含まれます。借金も相続の対象となるので、相続にはいろいろな問題が絡んでくるのです。
「第五編 相続」は、第一章の総則に始まり、第八章の遺留分までとなっています。これらのなかで、相続の効力や、遺産の分割、相続を放棄したい場合にとるべき方法、遺言の書き方などについて網羅的に説明されています。
相続法改正が法務省で議論されている
法律は、時代の流れに合わせて少しずつ改正されていくものですが、相続法も例外ではありません。制定された当時とでは、状況が変わって現代にそぐわないようになってきています。社会環境の変容に応じて生じた齟齬を修正するために、相続法改正の必要性が問われるようになってきました。
法務省でも盛んに議論されていて、2018年(平成30年)7月6日には「民法及び家事事件手続法」を改正する法律が成立しています。公布は同年7月13日です。
改正へと法務省が踏み切った主な理由は、日本社会の高齢化にあります。死亡した人物の配偶者が高齢化している可能性が高い現状で、残された配偶者を保護しなくてはいけないという必要性が高まったことから、改正が行われることになりました。
改正された内容は、配偶者の居住権や遺産分割方法について、遺言制度の見直しなどです。ほかに、相続人以外の者の貢献を考慮するべきという考え方も加わってきています。
相続法改正とは?
相続法改正について、もう少し詳しくみていきます。
今回、相続法を改正することになった大きな理由の一つとしては、上述のとおり、日本が超高齢社会を迎えたことが挙げられます。総人口に占める65歳以上の人口が増大した社会のことを一般に高齢化社会と呼んでいますが、具体的にいうと65歳以上の人口が総人口の7〜14%となっている状態です。これに対して、超高齢社会とは、65歳以上の人口が総人口の21%を超えていることを指し示しています。5人に1人が、65歳以上ということです。
これだけ高齢者の割合が多くなると、自ずと死亡する人の配偶者も高齢である確率が大きくなります。高齢で一人残された配偶者が、住むところもないという状態におちいらないように保護するために、改正が検討されたのです。配偶者に居住権がなく、子供が前妻の子であったり、子供がいなかったりした場合には、いろいろなもめごとに発展する可能性があるからです。
このほかにも、以前のままの内容では不公平となるケースが想定されることについて、改正が行われました。
現在、相続法改正で検討されている課題とは?
現在、相続法改正に伴って議論されているのは、配偶者居住権関連の税制をどうするのかということです。せっかく居住権を得ても、相続税があまりに高くてそれを支払うために自宅を売却しなければならないというようなことは避けなければなりません。
配偶者保護のために、小規模宅地等の特例が認められていて、敷地の評価額を八割減とできる税制があります。この特例が、配偶者居住権にどのように適用されるのか、絡んでくるのかといったところは今後、配偶者居住権の施工日までに十分に議論されるべきところです。
従前の相続法の問題点
これまでの相続法では、相続が発生した時点で被相続人の預貯金口座は凍結されてしまっていました。もしも被相続人が遺言書を作成していなかった場合、遺産分割協議が完了するまで口座は凍結されたままです。
すると、残された配偶者は、葬儀費用や生活費などに必要な現金を口座から引き出すことができず、困ってしまいます。もちろん、ほかに口座を作っておくなどの準備をしておけばよいのですが、なかなかそのように用意周到に葬儀の準備をするというのも難しいでしょう。
遺産分割協議というのは、相続人が集まって遺産の分割内容を話し合い、全員が同意することで完了するものです。もし、遺言があれば比較的スムーズに進みますが、なかった場合は長引くことがあり、5年から10年かかるというケースも少なくありません。この間、高齢である配偶者は、現金が使えず困窮してしまうということが考えられます。
このように、従前の相続法ではいくつかの問題点があり、公平さに欠けた側面をもっていました。
相続法改正のポイント
今回の相続法改正は、次に挙げる4つのポイントがあります。
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配偶者の居住権保護
高齢の配偶者が住むところがないという状況におちいらないように、居住権を認めるための法改正です。二通りあって、一つは短期居住権。これは、遺産分割協議で方向性がまとまるまでの期間、無償で居住できるというもの。もう一つは、長期居住権で、相続が発生した当時に居住していた場合、遺言か遺産分割によって配偶者に使用を認めるというものです。
遺産分割
配偶者の相続分を増加させる見直しです。婚姻後に増加した財産について、配偶者の相続分を増加させるべきというもの。配偶者保護の考え方によって改正されています。
遺言制度
財産目録等について、自署を不要とすることや、これまでは面倒だった加除訂正のやり方を簡易的にするという見直しです。自筆証書遺言の保管制度を創設することも盛り込まれています。これによって、自筆証書遺言を安全に保管できるようになり安心です。
相続人以外の者の寄与
被相続人の子供の配偶者など、被相続人の財産を維持することなどに特別な貢献をした者は、相続人に対して金銭を請求することができるようになります。例えば、お嫁さんが長い間、介護をしていたようなケースが該当するでしょう。
皆に関係する相続
ここまで相続法の改正についてみてきましたが、相続うんぬんは自分にはまだ関係がないと考える人もいるかもしれません。たしかに、相続人になれる人は限られています。
基本的には、配偶者、子供、親、兄弟姉妹のみです。しかし、例えば子供にもそれぞれの配偶者がいるわけですし、その子供がいる場合もあります。相続で受け継ぐのは財産だけでなく借金もありますので、自分には無関係な話ととらえず、知識を入れておくようにしましょう。
まとめ
相続法改正は、超高齢社会を迎えた現代日本において、相続を受ける者と受けない者の間での不公平を軽減するために行われるものです。高齢になった配偶者が生活に困窮することがないように、長年介護をしてきたお嫁さんが財産を一切もらえないという事態にならないように、これからも議論が活発になされていくことが望まれます。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
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