※こちらの記事の内容は法改正により一部変更された内容が記載されている点があります。
修正された内容はコチラ「相続法の改正で、変更されたポイント」をご覧ください。

相続財産の分割方法についてのご相談がありました。
相続人が1人であれば、相続開始と同時にそのまま1人の相続人が遺産を引き継げばよいのですが、2人以上の相続人(これを共同相続人といいます)がいるときは、どうやって相続財産を分けていくかが問題になります。
相続には2つのパターンがあります。

1つは、各相続人に、どれだけの財産を分配するかその比率が決められている法定相続、もう一つは遺言書によって法定相続分にとらわれずに遺産分割を決められる指定相続があります。
法定相続よりも指定相続の方が優先されます。

 

■法律で決められている法定相続

法律では、相続する権利のある人を法定相続人といい、相続人となる配偶者や子どもなどの相続分を決めています。
法定相続分は、家庭の事情を考慮することなく、機械的に財産を分割する方法です。
被相続人が遺言書を遺さないで亡くなったときは、まずは法定相続の方法に従って相続することを原則とし、そこから共同相続人全員での話し合いにより決めていくことになります。

 

■遺言書に従って財産を分割する指定相続

遺言による相続は、法定相続にとらわれずに被相続人(遺言者)の意思によって分割方法を指定することができます。
この遺言による相続では、遺言者の意思を尊重するため、法定相続分より優先されています。
ただし、法定相続分を著しく無視した分割方法にならないように、一定の相続人には、遺留分という民法で定められている最低限相続できる財産を請求する権利が認められています。
遺言では、法定相続人以外の人を受遺者として指定することもできます。

 

■遺言書がなければ法定相続分で分割しなければならない、ということはありません

遺言書がないときは、まずは法定相続分どおりに分割することになりますが、遺言書がないからといって必ず法定相続分どおりにしなければならないということではありません。
共同相続人全員で話し合って(これを「遺産分割協議」と呼んでいます)、分割方法を決めることができます。
遺言分割協議は、必ず共同相続人全員が参加して行ない、共同相続人全員の合意によって決められることになります。
ところが、意見が相違したりして話がこじれてしまうと、まとまるものもまとまりません。どうしても話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てるといいでしょう。

ただし、調停でも話し合いがまとまらず不成立になってしまったときには、審判手続きに移行することになります。
それでもなお、審判の結果に不服があれば、高等裁判所に不服申立ができます。

 

 

■相続が発生したら、まず遺言書があるか否かを確認しましょう

遺言書があった場合は、遺言書が、自筆証書遺言書、秘密証書遺言書、公正証書遺言書のどの形式であるのかを確認しましょう。
遺言書(公正証書による遺言を除く)の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。

この「検認」という手続きは,共同相続人に対して、遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言自体の有効・無効を判断する手続ではありませんので、その点については注意が必要です。

一方、公正証書遺言書については、家庭裁判所の検認を受ける必要がないため、そのまま、指定内容に従って財産を分割することができます。
いずれの場合でも、遺言で指定された相続内容に従って相続手続きをした結果、特定の相続人が他の相続人よりも多くの財産を相続する事となってしまった場合には、相続人間での不公平を解消させるために、遺留分(民法で定められている相続人が最低限相続できる財産の割合)を侵害された分を取り戻すことができる、遺留分減殺請求ができるようになっています。

 

■遺産分割には期限がありません

民法上、遺産分割はいつまでにしなければならないという期限は決められていません。
ところが税務上は、相続税の申告期限が定められており(相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています)、その期限までに遺産分割協議がまとまらないときは、法定相続分で取得したものとして申告納税を行ない、協議がまとまった段階で修正申告をするとよいでしょう。

ただし、遺産分割には期限が決まっていないからといって、いつまでも揉めていてもいいというわけではないでしょうし、協議が長引いたり、そのままになってしまうことで、その間に相続人が亡くなってしまったりすると、相続関係が余計に煩雑になることも懸念されます。

当事者同士での話し合いで解決ができなければ、弁護士など法律家に依頼されるのもひとつの方法ではないかと思います。
弁護士が代理人として他の相続人と話し合うこともできますし、それでも解決ができなければ、遺産分割調停となります。
いずれにしても、長期化することにあまりメリットはないのでないかと思われます。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。
遺産分割で揉めてしまったら、どうぞ当センターまで、お気軽にご相談下さい。