中小企業の「事業承継税制」を利用する人が急増しているそうです。
では、どうして中小企業の「事業承継税制」を利用する人が急増しているのでしょうか?
中小企業の事業承継の場合には、承継する際の税負担や後継者が足りないなど、問題がいろいろあります。
中小企業経営承継円滑化法が、スムーズに中小企業の事業承継をして、事業継続に役に立つために制定されました。
ここでは、中小企業経営承継円滑化法と事業承継税制~相続税納税猶予の特例についてご紹介しましょう。
●中小企業経営承継円滑化法
中小企業経営承継円滑化法の施策としては、民法の遺留分の特例、事業承継税制、金融支援があります。
・民法の遺留分の特例
民法においては、最低限一定の相続人が相続できる「遺留分」というものが決められています。
しかし、ほとんどの相続財産が自社株の場合は、遺産分割を遺留分によってすれば、自社株が分かれるため良くない影響が経営に生じることがあります。
そのため、特例として、一定の条件をクリヤーする中小企業の後継者が、遺留分の対象から自社株として生前に贈与されたものを除く、あるいは事前に評価額を固定することができるものが設けられました。
特例が適用されるためには、一定の条件をクリヤーしたうえで遺留分がある全員の推定相続人の了解をもらって、家庭裁判所の許可と経済産業大臣の確認を受ける必要があります。
・事業承継税制
事業承継税制は、事業を先代の経営者から承継した後継者の税負担を少なくするために、納税が贈与税と相続税について猶予される特例です。
・金融支援
事業承継の場合には、贈与税・相続税の納税以外に、多額の資金が事業用資産や自社株を買い取りするためなどに必要になり、事業承継に影響する場合があります。
そのため、金融支援の特例が、「認定中小事業者」という経済産業大臣から認定されたところとその代表者に設けられました。
贈与税・相続税の納税や事業用資産や自社株の買い取りなどを代表者が行う際に、低利融資が日本政策金融公庫によって受けられます。
また、金融機関から事業承継の資金を借り入れる際には、信用保証協会の保証枠として通常のものとは別に新しいものが準備されます。
●事業承継税制~相続税納税猶予の特例
自社株を相続によって譲り受けた相続人は、相続税をこの自社株に関して納める必要があります。
しかし、相続税の税率は高額な自社株の資産になるほど高くなるため、重い税負担になります。
そのため、上場株式を除いた自社株を相続した際に、相続税の納税が一定の条件のもとで猶予される、事業承継税制~相続税納税猶予の特例が設けられました。
ここでは、事業承継税制~相続税納税猶予の特例の内容についてご紹介しましょう。
自社株として事業を承継する後継者が相続したものの中で、一定のものについて相続税の納税としてその8割に対応するものが猶予されます。
後継者が亡くなった場合や、次の後継者に後継者がさらに贈与した場合などは、相続税として猶予になったものが免除されます。
なお、トータルの発行済株式数の3分の2を、相続する前から持っていた分も入れてオーバーした場合は、特例はこのオーバーした部分について適用になりません。
では、相続税の納税はどうすれば猶予されるのでしょうか?
相続税の納税が猶予されるための手続きについて
まず、経済産業大臣の認定を相続が始まった後に受けます。
企業の業態や規模、先代の経営者と後継者の議決権の割合などが、主な条件として規定されています。
次に、一般的に被相続人が亡くなった日の次の日から10ヶ月という相続税の申告期限までに、税務署に相続税の申告書というこの特例を受けたいということを書いたものと書類の一定のものを出します。
この際に、担保として、猶予になる相続税と利子税額に応じたものを提供する必要があります。
継続して納税の猶予を受ける場合には、継続届出書を税務署に、納税が猶予されてから5年までは毎年、3年ごとにその後は出すことが注意点としてあります。
納税猶予期限は、自社株を譲ったり、納税が猶予されてから5年までに会社の代表者を後継者が辞めたりするなど、一定の条件に該当する場合は確定します。
この際、猶予になっていた相続税の一部あるいは全額と利子税を納める必要があります。
なお、後継者が亡くなった場合は、猶予になっていた相続税の一部あるいは全部が免除になります。
また、自社株を3代目の次の後継者に後継者が贈与して、贈与税の納税猶予を次の後継者が受ける場合も免除されます。
しかし、納税が猶予されてから5年間は、理由としてやむを得ないものがある場合に限定されます。
●まとめ
事業を承継する際に負担が重いということで、先代経営者の事業を辞めるのは、経済を活発にすることから良くないことであり、残念なことです。
事業を承継する際は、対策を事前に行っておくことによってスムーズに進められます。
有効にここでご紹介したような制度を活用しましょう。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。