ここでは、平成29年度税制改正による相続税に関係する見直し内容についてご紹介しましょう。

●贈与税・相続税の納税義務

・外国で暮らしている人の居住期間

国際相続に関係する贈与税・相続税の課税範囲は非常に複雑ですが、被相続人が何年外国・日本のいずれに暮らしていたかが基本的な問題になります。
従来の相続税法においては、日本で被相続人が暮らしていると、国内・国外の財産の全てが課税対象になります。
そして、外国に被相続人が移住した場合でも、5年以内の場合には国内・国外の財産の全てが課税対象になり、5年をオーバーするとやっと国内だけが課税対象になります。
というのは、外国に課税を日本で免れるために移住するのを防止するためです。
しかし、平成29年度税制改正によって、この条件が10年に5年から延長されます。

外国に移住して10年経過しなければ、国内・国外の財産の全てが贈与税・相続税の対象になります。
これまで節税対策を海外に移住することによって行おう思った人にとっては、非常に厳しくなりそうです。

・一時的に日本に駐在している人に対する課税

平成29年度税制改正前の現在は、日本に駐在している外国人は、日本の相続税が日本国内と本国の資産に対して課税されています。
先にご紹介したように、日本で被相続人が暮らしていると、国内・国外すの財産の全てが課税対象になるためです。
例えば、外国人が国家機関や企業などの駐在員として来日して、不慮の事故で数ヵ月後に死亡したとしましょう。
この場合、外国人は日本に死亡した時点で暮らしていたため、相続税が本国の財産にまで課せられます。

外国と比較すると、日本の相続税は相当高い方であるため、外国人が一時的に日本に駐在する場合にはリスクの大きなものになります。
そのため、日本に駐在する前に親族に全ての財産を贈与したり、企業にも相続税を負担してもらったりするなど、特別な対策を行っていました。

基本的に、日本に仕事で駐在するような外国人は、優秀なエンジニアや外交官などが多く、積極的に日本ではこのような優れた外国人を活かしたいですが、相続税に関する課税の問題があるため日本に駐在するのを躊躇する要因になっていました。
そのため、日本に駐在していた期間が相続が始まる前の15年以内でトータル10年以下の場合は、外国人が日本に一時的に駐在して死亡した際に、贈与税・相続税のその家族に課されるもの対象を「国内の財産だけに限る」ように変わっています。

タワーマンションの不動産所得税・固定資産税

60mの高さをオーバーするタワーマンションの場合は、税額が階数によって違ってきます。
つまり、税額はタワーマンション全体としては同じですが、税金は低層階で暮らしている人が少なく、高層階で暮らしている人が高くなります。
例えば、40階のタワーマンションの1階で暮らしている人の税金を100とすると、39分の10を1階増えるごとにプラスするようになります。
40階になると、1割の税金がプラスされるようになります。

このような補正率をベースにして、税額をタワーマンション全体で按分して、税額をそれぞれの部屋について算出します。
固定資産税・不動産取得税、都市計画税についても適用されます。
相続税の算出の場合には、固定資産税評価額に建物の評価額はなるため、影響が相続税にもあります。
これまでタワーマンションの場合には、同じ面積であれば高層階も低層階も税額は同じでした。
そのため、節税するためには、高い取引価格の高層階の方がいいと言われていましたが、平成29年度税制改正によってそうとは必ずしも言えなくなります。

 

非上場の中小企業の株式の評価

非上場の中小企業をメインにした株式の評価は、計算が類似業種比準方式で行われます。
この方式の場合は、3つの利益、配当、簿価純資産の要素を使って、一般的なその業界における企業と比べて評価額を決めます。
しかし、この中で別の要素よりも利益が3倍に評価されるので、贈与税・相続税がいい企業ほど高くなっていました。
そのため、不利にならないように、純簿価資産、配当と同じ比率で利益を評価するように改正します。
なお、これ以外にも改正点がいくつかあるため、詳細についてはネットなどで確認してみましょう。

・事業継承税制

相続を中小企業の経営者が行う場合は、考えている以上に自社株の評価額が大きくなる場合が問題になります。
そのため、経営者が自社株を後継者に贈与・相続する場合に、事業承継税制という一定の要件をクリヤーすると納税が一定の範囲まで猶予になる制度が以前からありました。
事業承継税制の一つの要件として、従業員数を5年間平均で8割維持するというものがありますが、従業員数がもともと多くない中小企業の場合には1人少なくなっただけで要件をクリヤーできなくなる問題がありました。
そのため、1人の従業員が少なくなった場合でも問題ないように改正されます。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。
税関係でお悩みの方は相談無料で対応可能ですので是非ともご連絡ください。