音信不通だった母が死亡していたことが判明し、同居していた内縁の男性から連絡を受けて、音信不通だった母が死亡したことを知りました。
相続人となったのは、私と兄の2人の子供だけです。

相続財産としては、◯◯県◯◯市に約830坪の土地(宅地や畑など)のみ。内縁の男性は生活保護を受けているとのことで、現金はほとんど残っていない状況でした。

相続人となった私たちは、役所などに連絡し、年金など分かる範囲の手続きを行っていきました。
幸いにも税金の滞納などもなく負債の心配はなさそうですが、長年母とは音信不通だったため、母の私生活に関する詳細な情報が何も分からず、内縁の男性に聞いても詳しいことは分からないとのことでした。

それから10年以上の期間が過ぎましたが、今更ながら、個人間の借入などあるかもしれないと思い直し、今からでも相続放棄をして万が一のときには関わりを持ちたくないと考えました。母が死亡して10年以上経っていますが、今から相続放棄の手続きを行うことは可能なのでしょうか。

 

相続放棄の期限

民法では、相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから 3か月以内にしなければならないと定められています。また、どうしてもこの期間中に相続放棄の申述が出来ない特別な事情がある場合には、この3か月の期間中に、亡くなられた方の最後の住所を管轄する家庭裁判所に、相続するか若しくは相続放棄をするのかを考える期間の伸長を求めて申立てをすることで,家庭裁判所がこの3か月の熟慮期間の伸長を認めてくれる場合があります。(民法第915条)

 

借金にも時効があるの?

借金には、弁済期又は最後の返済から一定期間が経過すると消滅時効が成立します。いわゆる、時効というものです。
この期間は、貸主か借主のいずれかが商法上の商人であれば、商事債権として5年(商法522条)、いずれも商人でない場合には一般的な債権として10年です。(民法167条)

しかしながら、時効期間が経過したからと言っても、自動的に借金が消滅する訳ではありません。消滅時効の『援用』をすることが必要です。『援用』とは、時効の利益を受けるということを相手に伝えることです。具体的に言いますと、消滅時効を援用するという旨の通知を、配達証明付きの内容証明郵便で郵送するという方法があります。
但し、裁判で判決をとられていたり、差押え又は仮処分、債務の承認等が原因で時効が中断していたりする場合がありますので、よく注意しなければなりません。

 

本件の解決までの流れ

上記のとおり、相続放棄には期限があります。相談者ら相続人は、相続の開始は当然知っていましたし、特段の事情と言えるものも特段ありませんでしたので、相続放棄は出来ないと考えられます。

借金の問題については、10年以上経過した現時点で、被相続人に金銭を貸し付けているという貸金業者や個人から、貸金返還の裁判などを起こされたこともなかったため、借金についても心配ないと判断するに至りました。

次に残った問題は、広大な土地でした。特に有効な活用をしている訳ではなかったため、維持費と固定資産税だけが無駄にかかっている状態でした。
地元の不動産会社などに相談すると、隣接する土地の所有者も土地を持て余して困っていると言うことが分かりました。

相続放棄が出来ないのであれば、何とかこの不動産を上手く利用するか、若しくは処分したいと考えました。そこで、近くのゴルフ場や不動産会社の協力を得て、ゴルフ場のオーナーに買い取ってもらうこととなり、無事に負の財産と化していた不動産を利益に変える事が出来ました。
ちなみにその土地は、ゴルフ場としての利用ではなくソーラーパネルの設置などの運用を検討しているという話でした。

 

最後に

本件の様に、「関わりを持ちたくない」「面倒だから」「よく分からない」「こわいから」といった理由だけで相続放棄をする方がいらっしゃいます。
期限のある手続きですから、早く決断し動くことは決して悪い事ではありません。ですが、債務超過などの理由がないのであれば、一概に相続財産を放棄するより、相続する方が利益となるケースもございますので、もしお悩みの場合は、財産の資料などをお持ちのうえ専門家に相談することも大切かと思料します。
上記で説明をしましたが、相続放棄の期間を伸長することも可能です。
当センターでは、相続に関するご相談を無料で承っております。お気軽にご相談下さい。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。