アパートローンの恐怖

賃貸用のアパートは、遥かに賃貸需要をオーバーするペースで建てられていましたが、急に減速しています。
これで賃貸用のアパートの建設ラッシュは終わる可能性が大きくなりますが、むしろ問題が発生するのは今からです。
相続対策のために賃貸需要がないところに建てた賃貸アパートは、空き室のリスクが近い将来発生する恐れがあります。

 

銀行が次々とアパート建設を提案

2017年12月に国が公表した住宅着工戸数によれば、主にアパートの貸家建設は、7ヶ月続けてマイナスで、3%のマイナスに前年同月比でなりました。
年換算の着工件数の季節調整済みのものは、大幅に少なくなり、9.8%のマイナスに前月比でなりました。
賃貸アパート建設は、ここ数年、遥かに賃貸需要を上回って増えており、2016年は特に前年同月比で伸びが2桁台が続いていました。
土地を持っている人が、賃貸アパート建設を相続税対策のために急ぐことが多くなったことにプラスして、銀行の収益がマイナス金利によって苦しいため、アパートローンをすすめたことが拍車を賃貸アパート建設にかけました。
銀行としては、融資を増やすために、土地を持っている人に賃貸アパート建設を不動産業者のように提案したり、不動産業者と手を組んだりするようなことも場合によってはあったそうです。

このように過熱し過ぎたために危機感を金融庁が持って、行政指導を行ったことによって、融資を銀行が控えるようになり、着工件数も低迷しました。
これで建設ラッシュは落ち着くようになるでしょうが、過剰な賃貸アパートの問題がこれで解消されるということではありません。
深刻に問題がなってくるのはむしろ何年か経ってからでしょう。

 

相続税対策が破産のきっかけに?

ここ数年の賃貸アパートの建設ラッシュは、先にご紹介したように、相続税対策ということがあり、大量の賃貸アパートが賃貸需要を考慮しないで建てられました。
今から日本では人口が本格的に少なくなってきますが、人口が少なくなるのは、人の数のみが同じ状態で少なくなるということではありません。
経済活動によって人は暮らしているため、ある程度人がいなければ経済を保てなくなって、人はより便利なところに移るようになります。
そのため、人口が少なくなることは、人口動態が同時に変わるようになります。

10年後のアパート状況は?

10年後、賃貸アパートとして地方の都市の郊外に建てられた一部のものは、賃貸需要が非常に少なくなる恐れがあります。
つまり、空室が大量に発生します。

しかし、この空室のリスクは緩やかに進むので、ほとんどの人が状況を把握するまでに時間が相当かかります。
最近、賃貸アパートとして建てられたばかりのものは、入居者を募るとすぐに集まるでしょう。
現時点では、それほど人口減少は激しくないため、古い賃貸アパートでも空室は少ないでしょう。

また、本格的に人口が少なくなるのは今からであるため、10年後には状況が全く違っている可能性があります。
異変が初めに現れるのは古い賃貸アパートです。
初めは空室が1ヶ月で埋まっていても、そのうちに空室が数ヶ月しないと埋まらなくなります。

今後公的な支援が必要になる?

そのうちに古い賃貸アパートの場合は、空室がいつまでも埋まらないところが現れてきます。
しばらくこのような状況が続いて、そのうちに、従来は新築であった賃貸アパートの場合でも空室になってきます。
人口が本格的に少なくなったところでは、銀行が融資した資金を回収することができなくて、物件の一部は不良債権になります。
それぞれの銀行は、バブルが崩壊した後、不良債権のために苦しみましたが、地方銀行の中には同じような状態になるところもある可能性があるでしょう。

しかし、地域が人口が少なくなることによって衰えてくることは仕方がないことです。
このような状況をそのままにしておくと、地域の銀行は経営ができなくなって、金融システムが安定しなくなります。
銀行がもし経営できないような事態になれば、支援策が何らか必要になるでしょう。
支援策としては、銀行の損失を処理するために、公的資金によって売れない賃貸アパートを買い取って流動化することを促進するようなものが考えられます。
人口が少なくなることは考えている以上にインパクトが大きいため、ある程度このような事態についても考えておくことが必要でしょう。

 

相続税対策のアパート建設まとめ

賃貸用のアパートは、遥かに賃貸需要をオーバーするペースで建てられていましたが、急に減速しています。
ここ数年の賃貸アパートの建設ラッシュは、相続税対策ということがあり、大量の賃貸アパートが賃貸需要を考慮しないで建てられました。
しかし、10年後、賃貸アパートで地方の都市の郊外に建てられた一部のものは、賃貸需要が非常に少なくなる恐れがあり、空室が大量に発生します。
賃貸アパートに融資した銀行がもし経営できないような事態になれば、銀行の損失を処理するために、公的資金によって売れない賃貸アパートを買い取って流動化することを促進するような支援策が何らか必要になるでしょう。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は相続人によって異なります。相続人は親族であり、その後も長い時間をかけて付き合う可能性が高い相手。だからこそ、円滑に、そしてお互いが納得した遺産相続手続きを進めたいですよね。