Q: 金融機関を相続で活用する方法はありますか?
A: 金融機関は相続関連サービスを強化しています。税理士、司法書士ら専門家を紹介してくれたり、遺言作成支援や遺言執行などのサービスをしたりする金融機関もあります。
金融機関のセミナーを上手に活用する
金融機関は相続に関するサービスの提供に積極的です。
個人金融資産は約1700兆円ありますが、その約60%を60歳以上の高齢者が保有しており、金融機関は相続に関するサービスを強化することで、高齢者の金融資産の取り扱いを増やそうとしています。
一方、高齢者の子供や孫の世代との取引も強化したいと考えており、そのためにも相続人の側から見た相続関連サービスに力を入れているのです。
金融機関はメガバンク、信託銀行、地方銀行、信用組合、郵貯銀行、農協系などいろいろありますが、相続に関するサービスはいずれも強化しています。
具体的にどのようなサービスがあり、どのように活用したらいいでしょうか。
まず、相続に関するセミナーを開催するところが目立ちます。支店など顧客により近い場所で随時開催し、税理士ら専門家を招いて相続税の個別相談をしているところも多いようです。
高齢者の中には、取引金融機関のセミナーを複数聴講して、相談に応じてくれそうな金融機関を絞り込んだり、税理士ら専門家とつながりを持とうとしたりしている人も増えてきました。
相続に関する知識を身につけるにはこうしたセミナーを活用するのはいいことですし、普段あまり付き合いがない税理士らと知り合うにはよい機会だと思います。
金融機関は、顧客からの相談に応じると言っても、弁護士や税理士、司法書士らが業務としていることはできません。例えば、相続税の申告や相続登記を代理することはできません。
顧客の側からすると、最終的にはそうしたことをやってほしいというニーズがあるのですが、金融機関ではできないので、関係のある専門家を紹介することにしています。
最近は、親が認知症などの場合の相続対策、具体的には成年後見制度の利用なども含めて弁護士や司法書士等を紹介するところも出てきました。
比較的一貫した相続関連サービスを提供しているのは信託銀行でしょう。
具体的には、「遺言信託」です。これは、遺言作成支援、公証人との連絡、遺言の保管・書き換え、相続発生後の遺言執行、相続手続きなどのサービスを全体として提供するものです。
ただ、相続財産に応じて手数料がかかり、最低でも100万円台と結構高い上、弁護士や税理士の報酬は別途かかります。また、紛争が発生した場合や紛争が見込まれる場合は利用できません。より身近に相談に乗ってもらいたいと考える向きには、地域の金融機関が比較的好まれているようです。
例えば、信用金庫、郵貯銀行、農協系などです。特に相続対策を考える地主や中小企業のオーナーに利用されているようです。
節税に役立つ金融商品も
金融機関が力を入れているのは相続対策に役立つ商品の提供です。具体的には教育資金贈与商品、結婚・子育て資金贈与商品です。
前者は2013年4月にスタートしました。2019年3月末の預け入れまでと限定されていますが、子供や孫に1人当たり1500万円までの教育資金を無税で贈与できます。
結婚・子育て資金の贈与は同じく1人当たり1000万円まで無税です。
また、現預金で持つより、生命保険に一時払いで加入したほうが、非課税枠を利用できるため、生命保険への加入をすすめる金融機関も多いようです。
金融機関が提供するのはこの2つが主で、セミナーなどに参加するとこうした商品をすすめられることも少なくないと言います。
もちろん利用すればメリットはありますが、自分の老後資金が足りなくなる場合もあり、自分の生活資金対策を考えてからにしましょう。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。