※こちらの記事の内容は法改正により一部変更された内容が記載されている点があります。 修正された内容はコチラ「相続法の改正で、変更されたポイント」をご覧ください。 |
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夫婦のいずれかが亡くなった場合、遺った配偶者は、一般的にはそのまま住み慣れた住宅に住みたいと思うでしょう。
しかし、子供にも相続権があるため、配偶者が住む住宅が遺産分割の結果によっては無くなる恐れもあります。
現在は長生きするリスクがあると言われるくらい平均寿命が長くなっているため、遺った配偶者が相続した後、生活を数十年単位で続けることは十分想定されます。
そのため、どのように配偶者の暮らしを守るかという課題が重視されます。
今回の民法の見直しにおいては、配偶者の暮らしを守るという観点から、相続する際に住んでいた住宅への居住権の短期的なものにプラスし、新しく「長期居住権」を設けることが検討されています。
配偶者の本来の貢献に応じた遺産分割の実現
夫婦と一言で言っても、長い間連れ添った場合もあれば、短い婚姻期間の場合、長い婚姻期間であるが別居していた場合などいろいろです。
一方、現在の民法においては、婚姻期間に関係なく配偶者の法定相続分は一律に決められています。
公平性がこのような制度は無いだろうということで、遺産分割の際に具体的な配偶者の貢献度を反映させることが議論されています。
具体的な案としては、以下検討されています。
・財産分与の離婚の際の考え方に準じて、婚姻した後に増えた財産について、寄与分として配偶者だけを対象にしたものを認める
・法定相続分を一定の年数以上の婚姻期間の夫婦間で引き上げる
寄与分制度の見直し
寄与分が、相続人の貢献を遺産分割の時に考えるものとしてあります。
寄与分は、特別の寄与が被相続人の財産の増加あるいは維持にあった際に認められるものです。
特別の寄与というのは、被相続人との関係をベースにして、期待される普通の限度をオーバーする貢献のことを言います。
被相続人の介護においても、寄与分が期待される普通の限度をオーバーする貢献の場合は認めらます。
しかし、被相続人の介護の場合は、ある程度親の世話を子供がするのは当然ということで、期待される普通の限度をオーバーしないという場合も多くあります。
また、被相続人の介護の場合は、専ら一部の人が行っており、貢献に相続人間で偏りがあることも多くあります。
しかし、現行の民法においては、被相続人の財産の増加あるいは維持が条件であるため、十分に介護の貢献が反映できません。
そのため、現行の寄与分以外に、介護について相続人間で著しい貢献の違いがある場合にも認められることが議論されています。
遺留分制度の見直し
遺留分というのは、兄弟姉妹以外の一定の相続人が相続できる最低限の財産の比率です。
しかし、一定の比率で遺留分は決められているため、長年配偶者が被相続人をサポートし、遺産の増加・維持に貢献した場合でも、貢献は配偶者に反映されません。
遺言書で全ての財産を特定の相続人に相続させるという場合、別の相続人は遺留分を侵されたため、遺留分を相続するために、遺贈したものを返還することを必要な限度で要求することができます。
遺留分減殺請求権が行われると、遺贈の効力が遺留分の相続に必要な限度で無くなり、相続人間で遺贈されたものは共有になります。
この共有状態を無くすためには、共有物分割などの手続が別に必要になります。
また、遺産分割の場合は、家庭裁判所の審判・調停手続が準備されていますが、通常の民事訴訟として遺留分減殺請求訴訟は取り扱われて、管轄が地方裁判所になり、両方を取り扱う裁判所、手続が違っていることも一度で柔軟にトラブルを解決するためのハードルになっています。
事業を被相続人が営んでいる場合は、特定の相続人に自分のあとは事業を承継して欲しいとよく思うでしょう。
この場合に、遺言書で特定の相続人に事業用の店舗などの財産や会社の株式を相続させるというように書いた場合でも、遺留分が別の相続人にあるので事業用の全ての財産が承継できなかったり、先にご紹介したように事業用の財産が別の相続人の遺留分減殺請求によって共有になり、共有物分割の手続きが別途必要になるなど、事業承継がスムーズにできない恐れがあります。
自筆証書遺言の方式緩和
遺言には方式がいくつかありますが、自筆証書遺言は簡易な費用がかからない方法としてあります。
現行の民法においては、自筆証書遺言の場合は、自分で全文、氏名、日付を手書きすること、内容を変える場合は、変えるところを示して、変えた旨を追加し、捺印する必要があります。
自筆証書遺言の場合は、第三者が関与しないため、変造・偽造のリスクがないように要件として厳格なものが決められています。
このような要件をクリヤーしなければ、無効に遺言がなります。
また、自分で全文を書くことを求めると、障害がある人や高齢者の場合は、大きな負担にそれ自体のものがなります。
そのため、自書の範囲を限ったり、捺印が必要ないなどの方策によって、緩く自筆証書遺言の要件をすることが議論されています。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。