専門で働いている介護士の方でも体を壊したり、昼夜問わずの仕事に疲れてやめてしまう人もいるというほど大変な「介護」。
自分の身内でも介護をするとしんどくなるというのはテレビで見かけたりしますよね。ましてやそれが旦那のご両親などの介護だったらどうでしょうか?身内以上の辛さを感じることになると思います。

そして、そこまでして最期まで介護を頑張っても、遺産の1つも入って来ない。
決して金銭を求めるわけではないけど、ここまで頑張ってきたのになんだかな…。

そんな方に朗報です。
これから行われる民法改正で、被相続人(亡くなった方)の介護をしていた相続人以外の親族が、相続人に金銭を要求できる制度が新設されるそうです。

では、その内容についてみていきましょう!

これまでは介護をしても遺産はもらえなかった

相続人となれるのは、被相続人の配偶者や子供、親兄弟です。
ですので、例えば被相続人の子供に当たる息子のお嫁さんや、被相続人の甥や姪は相続人ではありません。
この方たちがどれだけ被相続人に対して一生懸命介護をしていたとしても、相続として財産を渡してあげることはできませんでした。

家族は誰も面倒を見ていなかった被相続人のことをずっと介護し続けていたお嫁さん。本当ならヘルパーさんなどに支払って介護をしてもらうべきところを自分が頑張ってお金が浮いたはずです。
なのに、被相続人が亡くなってしまった後となっては、遺言を残してもらっていない限り、相続をすることができないばかりか、何もしなかった相続人に金銭の要求をする権利もありませんでした。

これからは遺産をもらえるようになる!?

でも、これから民法改正が行われれば、相続人でなかったお嫁さんたちも、一定の条件を満たせば、相続財産の一部をもらうことができるようになるかもしれません。

ただし、財産をもらうためには、相続人の合意が必要となりますので、ただ介護をしていたというだけでは財産をもらうのは難しいでしょう。
相続人の合意が得られなかった場合は家庭裁判所へ請求することができますが、請求したところで今までの頑張りに対して納得のいく金額になるとは限りませんし、心理的な負担もかなり大きいと考えられます。

寄与分が認められる「特別寄与者」

相続人の中に“被相続人の事業を無償で奉仕していた“”長年被相続人の介護に努めていた“など、被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献してきた相続人(この人を「特別寄与者」と言います)がいれば、その人には「寄与分」が認められます。
この寄与分は、特別寄与者の負担度や貢献度に応じて相続財産を取得する権利のことです。

寄与分の具体例としては、

  • 被相続人に自分の財産を給付した
  • 被相続人の介護を無償で長年にわたって行った
  • 被相続人の医療費などを立て替えて支払っていた
  • 被相続人の事業に無償で奉仕していた・資金提供をしていた

などの例が挙げられます。

そして、条文中の「特別の寄与」については

  • 無償性…報酬が発生しないこと
  • 継続性…概ね3~4年以上の長期間に渡って従事してきたこと
  • 専従性…片手間で行ってはいないということ

以上のポイントを満たしていることが重要なポイントです。

寄与分は、原則相続人による協議で決めます。協議で決まらなかった場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。

さて、実は現行法でも、家庭裁判所では被相続人の子供の嫁による介護による貢献等は子供の行為と同じであるとみなして寄与分を認めるなど、柔軟な運用が行われていますが、今回の民法改正では相続人とはならない、ごく近い関係の親族以外の親族が、相続財産の維持や増加に貢献したような場合に、寄与分に応じて相続財産を取得する権利を認めることが検討されたというわけです。

ただし、あくまで「被相続人の親族」に限られていますので、内縁の妻などには認められませんのでご注意ください。

「特別受益者」との違い

特別寄与者と似た言葉で「特別受益者」というのがあります。
特別受益者とは、相続人の中で、被相続人から生前贈与や遺贈を受けた人のことを言います。

特別受益には以下のような例が挙げられます
・婚姻の為の贈与…持参金(嫁入り道具等)や支度金(結婚の準備に必要なお金等)。※結納金や挙式費用は含まれません。
・養子縁組の為の贈与…持参金等。

・生計の資本の為の贈与…住宅の新築資金、大学の学費、事業に必要な資金、等

このような特別受益を受けた相続人とそうでない相続人が法定相続分で相続をすると、同じ割合での相続となりますので、不公平となってしまいます。
民法では、この不公平を公平にするための規定が設けられています。
①特別受益者が生前贈与で受けた額を遺産総額にプラスします。
②それを法定相続分で按分し、仮の相続分を算出します。
③特別受益者の仮の相続分から、生前贈与又は遺贈された金額を差し引いて、実際の相続分を算出する。
という計算方法になります。

寄与分を認められるためには

さて、話を寄与分に戻しましょう。

寄与分を認められるためには、その行為が「特別」なものである必要があります。

民法877条1項では
「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」

と規定されていますので、例えば子供が親の介護をしていたとしても、それが義務の範囲内であると判断されれば寄与分は認められません。

介護における「特別」の目安は、「要介護度」です。
介護保険法には“要支援状態”と“要介護状態”があり、これらは介護サービスを受ける方の状態がどの程度なのかを判定するものです。
要支援状態は1~2、要介護状態は1~5に区分されており、どちらも1が最も軽度です。また、要支援状態より要介護状態のほうが能力低下は大きいとされています。

寄与分を認められるためには、要介護状態2(立ち上がりや歩行が自力でできず、排泄や入浴、衣服の着脱などにもほぼ全面的な介護が必要な状態)以上が目安と言われています。
このような常時の付添いが必要であろう状況であるにもかかわらず、子供が介護サービスを利用せずにその費用を浮かせていた、などの事情が必要です。ただし、週1~2日程度の療養看護や、施設に入っていた期間は認められません。

では次に、寄与分の評価方法についてみていきましょう。
寄与分の評価方法は
付添人の日当額×療養看護を行った日数×裁量(1~0.6)
となっています。
付添人の日当額については判例によってバラバラです。高いもので一日あたり8,000円という判例もありました(この判例の被相続人は2億円を超える遺産の持ち主だったようですが)。

ただし、寄与分が認められたとしても、遺産の5割を超えることはまずありません。よくて2~3割程度になるそうです。

まとめ

民法改正によって、これまで介護を頑張ってくれたお嫁さんなども報われる日がやってくることを願うばかりですが、この制度が整ったからと言って確実にお嫁さんに遺産を残してあげられるというわけではありません。
あくまで、遺言書を残せなかった場合にとれる救済措置…と言ったところでしょうか。

確実に遺産を残してあげたい人がいる場合は、やはり遺言書を書くべきでしょう。
そして、その遺言書は紛失したり内容が無効なものにならないように、公正証書遺言にしておくとなお良いでしょう。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。