相続した不動産はすぐに売却できるのか

相続した不動産はすぐに売却できるかと言われれば一概にできると言えません。その前に相続における不動産の取り扱い方法等について紹介していきます。
まず想像をした不動産物件・土地を放置しておくデメリットを紹介しましょう。一番のデメリットとしてあげられるのは固定資産税の存在です。固定資産税は毎年1月1日現在で所有している不動産の固定資産を基にした税金のことで不動産の所有している市町村に納めます。不動産物件・土地を相続しても使用していない人や離れた場所で生活している人にとっては固定資産税が悩みのタネになってしまいます。

固定資産税だけを払い続けるよりかは売却してしまった方がまとまったお金も入るし、固定資産税も払わなくて済みますよね。売却する前には所有者名義を自分に変更しなければいけません。

相続登記には期限はないですがいつまでも被相続人名義では売却もできません。相続登記の手続きの流れについて説明していきます。

①登記標本を取得

②相続人の戸籍・住民票を取得

③相続登記申請書類を作成

④相続登記の管轄法務局へ申請

以上の流れを踏むと相続登記をして名義変更することができます。この相続登記手続きがあるのですぐに相続した不動産を売却できないのです。それなので不動産の売却を検討している人は早めに相続登記をするようにしましょう。
相続登記は法務局へ行くので素人ではできないと思われがちです。実はそこまで難しいことはなく相続登記は個人でもできます。それでも揃える書類が多かったり、不慣れなため書類作成に時間がかかったりと手間がかかるのは事実です。自分でやらずに専門家に依頼する人も多いので弁護士や司法書士といった専門家に依頼しても良いでしょう。弁護士・司法書士へ依頼する場合の相場は5万円前後のことが多いです。
相続登記をしてすぐに売却するにしても相続税が加算されます。相続税や相続登記代など不動産売却の前にも費用がかかることを十分理解しておきましょう。

相続不動産の売却には取得費がかかります

取得人は何でしょうか。あまり聞きなれない言葉ですよね。取得人はその不動産を所持するためにかかった費用です。会社などで言えば経費に当たるものですね。取得費は譲渡所得税の計算で使用します。譲渡所得税の話をする前に取得費についての話から進めていきましょう。
取得費にはどのようなものが含まれるでしょうか。取得費には以下のものが含まれます。

  • 土地、不動産の購入人は別で支払った不動産登録料・不動産取得税・印紙税
  • 土地の埋め立てや土盛り費用
  • 不動産の所有権を得るための費用
  • 土地の測量費
  • 賃貸物件の所有者を立ち退かせるための費用

他にももちろん不動産の購入費も取得費になります。最終的には不動産取引に関する経費が取得費として扱われるのです。
中にはこういった事案もあります。相続した不動産が古すぎて購入した代金がわからない、取得費が不明といったものです。通常は権利書にそうした文言が書かれていて権利書さえ見つければわかるのですが、どうしても取得費がわからないという人は取得費を売却額の5%としています。しかしこの5%という数字だと譲渡利益が大きく出るリスクがあるのです。2000万円で買った不動産が3000万円で売却できたとします。そうすると5%で取得費が出るので取得費は150万円になりますよね。2000万円で購入したはずの不動産に150万円の取得費は少し高額すぎます。

相続した不動産の売却に適応できる【特例】

相続した不動産に対して特例処置として所得税が安くなる方法があります。まずは課税所得日の計算式から紹介していきます。
課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
譲渡価額とは不動産を売却した時の代金です。取得費は前述を参考にしてみてください。そして譲渡所得には大きく分けて長期所得と短期所得があります。長期所得は所有期間が5年を超えているもの、短期所得は所有期間が5年以内のものです。この長期所得、短期所得で課税譲渡所得金額にかかる税率が変わってきます。課税譲渡所得金額にかかる税率は住民税・所得税・復興税を合わせて長期譲渡で20.315%、短期譲渡で36.93%になっています。
もし被相続人が所有していた不動産が長期譲渡所得としたら相続3年以内の売却になると相続税のうち一定額を譲渡所得金額にかさんできます。よって結果的に所得税を安くできるのです。

相続した不動産の査定方法は?

相続した不動産が実際にどれくらいの価値を持っているのか知りたいですよね。不動産は査定をしてもらい価格を出してもらいます。何を基準に査定されるかといえば一概に言えないのが不動産です。築年数・立地・設備・道路沿い・都市の規模など様々な要因で査定額は変動します。また同じ大きさ、同じ築年数でも同程度の査定をされるわけではないです。不動産の価格は株価のように一進一退を繰り返していると思っていてください。
不動産の査定をするには不動産鑑定士という国家資格が存在しています。不動産鑑定士は試験難易度も高く人口が少ないです。しかし、不動産鑑定士の行う鑑定は正確とのことで査定をするのは不動産鑑定士がメインでした。近年では不動産鑑定士の行う査定が時間・費用ともにかかってしまうので不動産会社が査定を行うようになります。インターネットの普及によりインターネットを使った査定もできます。

さらに不動産会社へ一括に査定を頼むサービスも始まっていますよね。不動産会社一括査定サイトは一つのサイトで築年数など必要事項を入力すると一括で複数の不動産会社へ査定を依頼してくれます。不動産会社からすれば見込み客を見つけることができ、所有者としては一番高値で売却できる不動産会社を見つけることができwin-winの関係を築けているのです。

不動産会社を一括で査定するとこれは売れないだろうというほど高値を提示してくる会社もあります。そういう会社はただただ顧客を取り囲みたいだけであまり深くは関わらないほうが良いです。一括で査定を請求するメリットはバラバラな査定額を平均して相場を出すことができるということです。相場よりも高い金額の会社のほうが所有者にとって良いですが、相場に近い金額を提示してくれる会社のほうが適切な査定ができて信頼できます。
不動産会社選びで大切なことは信頼出来る会社を探すことです。さらにその会社の得意・不得意をしっかり判断する必要があります。得意不得意というのは地域や物件です。その地域で得意不得意もあります。その不動産会社選びで重要なのが前述の査定額が相場と近いかです。相場に近い査定額を出せる不動産会社は地域のことを知っていると理解できます。さらに不動産会社の中でもしっかり説明してくれる会社を選ぶようにしましょう。査定額を提示するにも口頭だけでなくしっかり書面で残してくれる、アポイントには遅れずにくるなど基本的なことですができる会社とできない会社では大きく違います。

不動産売却に必要な書類

不動産売却には必要書類が沢山あります。買い手だけでなく売り手も書類が多く大変です。では不動産売却で必要な書類を紹介していきます。
<査定の段階>
査定の段階で書類が必要になるのは訪問査定のときです。訪問査定の際は登記標本・公図・建物の詳細書類が必要になります。登記標本と公図は法務局で入手できるので取りに行くようにしましょう。
<不動産売却>
不動産売却をするには登記標本等とは別に売主本人の確認書類が必要になります。例えば身分証明書・実印・印鑑証明書・住民票などです。さらに固定資産税の確認も必要になるので納税通知書や固定資産税評価証明書も必要になります。他にも土地の測量図や平面図も必要です。マンションや土地を売却する際も同様です。
不動産売却をしてからの確定申告では売買契約書のコピーや不動産仲介手数料のコピー、測量費など必要経費のコピーが必要になるので捨てずにしっかり保存しておきましょう。

まとめ

相続する不動産を売却するには名義変更から行うようにしましょう。相続する物件では名義変更にかかる時間があるのですぐに不動産売却はできません。また不動産売却をするには査定が必要になります。査定は一括で請求できるサイトがあるので活用すると便利です。しかし、そういった一括サイトには悪質な不動産会社が出てくることもあります。悪質な不動産会社は相場よりも高額な査定額を提示することが多いです。あまりに高額な不動産会社は怪しいと思って気をつけて対応しましょう。不動産会社の中でも査定額を書面で提示してくれる企業が良い企業です。悪い企業と良い企業を見分けることも不動産売却で必要です。

監修者

氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)

-コメント-
相続には様々な形があり、手続きや申請方法もケースによって異なります。専門知識が無い方は申請書の不備等で無駄な費用が掛かってしまう可能性もありますのでしっかりと相談することをおすすめします。