女性が難病で寝たきりになって、病院に入院したような場合に遺言書を書くこともあるのではないでしょうか。
では、寝たきり難病女性の遺言書は有効なのでしょうか?
都内に住んでいる主婦が難病になった
パーキンソン病というのは、難病で運動傷害などが神経変性から起きるものです。
都内に住んでいる主婦は、この難病になって、口を動かすことや、手足を動かすことができなくなりました。
寝たきりに自宅でなっていたので、介護士が介護をつきっきりで行っていました。
しかし、はっきりと意識はありました。
手足は動かすことができませんでしたが、見たり、聞いたり、判断したり、考えたりすることは自由にできました。
遺言を介護士が本人の代わりに口述した
夫を数年前に亡くした時も主婦は寝たきりでしたが、話をすることはまだできたためなんとか遺産分割協議はまとまりました。
しかし、主婦と一緒に住んでいた長男は、万一のことが母親にあればどのように相続がなるか心配になって、公証人に母親の遺言書が作れるか相談しました。
その結果、介護士であれば母親の介護をしているため、母親の意思を確かめることができることになりました。
そこで、紙に財産を一つずつ書いて、紙に長男、次男、長女の名前を書いたものを準備して、どの子供にどの財産を相続させるか、紙に書いている子供の名前を介護士を通して指示してもらいました。
本人の代わりに介護士が母親の意思を口述し、公証人が同席して確認しました。
主婦はその後間もなく亡くなって、相続がスタートしました。
離れて生活していた次男と長女が、相続する時になって遺言書があることを初めて知りました。
次男と長女は、「母親である主婦が話ができなく寝たきりで、手足も満足に動かすことができないにも関わらず、遺言書を勝手に長男が作った」と騒いで、相続欠格と遺言書の無効の訴えを裁判所に起こしました。
そのため、長男は非常に怒りました。
というのは、次男と長女こそ、実家にたまに来る場合はあるが、しっかりと母親の顔を見たり、母親を見て話をしたり、母親の病気のことを心配したりするようなことはなく、すぐに帰っていたためです。
自分こそ、一生懸命母親の介護をしていたという自信もありました。
そのため、真っ向から裁判で争いました。
「通訳人」という話ができない人を助ける人の規定
公正証書遺言書に書かれている内容は、だいたい平等な法定相続分によるものでした。
長男に特に相続分が多いということではなかったので、自然と1点に争点は絞られました。
民法で決められている「通訳人」として、遺言書を作ることに関係した介護士が認可されるかでした。
厳しい規定が、公正証書遺言書を作る場合にはあります。
公証人にその中身を遺言する人は口述する必要があり、口述を公証人は書き、書いたものを証人と遺言する人に読んで聞かせる必要があります。
遺言する人が遺言書を自分で書かなくても、読み聞かせや口述が必要であるため、上手く話ができない場合や、自由に聴覚がならない場合には使いにくいものでした。
そのため、民法が1999年に改正されて、新しく「公正証書遺言の方式の特則」が設けられました。
この新しく設けられた規定は、傷害が聴覚・言語機能にある場合は、遺言を筆談や手話通訳によって伝えることが認められるのです。
話ができない人が遺言を公正証書によって行う場合は、遺言する人は、証人および公証人の前で、通訳人の通訳によって遺言する趣旨を申述し、あるいは自分で書いて、口授に代える必要があります。
証人あるいは遺言する人が聞こえない場合は、読み聞かせに代えるために、通訳人の通訳によって書いた内容を証人あるいは遺言する人に公証人は伝えることができます。
遺言する人の意思を十分に把握できるのは、介護をしている介護士や家族でしょう。
しかし、従来は判例として、通訳人と介護士を認めるようなものはありませんでした。
裁判は難しいものでしたが、主婦の意思を裁判所は理解して、公正証書遺言書に主婦の代わりに遺言を正しく口述して反映したことを認可する判決をしました。
つまり、通訳人として介護士を認可し、成年後見人として認められました。
そのため、長男の相続適格も認可され、有効であると公正証書遺言書は判断されました。
このようなケースは、高齢化が進んで認知症の人が多くなってくるにつれて、さらに今後は増えてくるでしょう。
このような規定は、一つの生前対策として、ぜひ把握しておきましょう。
まとめ
ここでは、寝たきり難病女性の遺言書は有効なのか、ということについてご紹介しました。
遺言書については、ここでご紹介したようなケース以外にもさまざまな難しいものがあります。
そのため、遺言書を作る場合には、遺言書を作成するプロがいる当センターに相談するのがおすすめです。
遺言書の作成に詳しい弁護士であれば、良い書き方に沿って書くことができます、安心して任せることができるでしょう。
監修者
氏名(資格)
古閑 孝(弁護士)
-コメント-
相続問題は、家族や親族がお亡くなりの際、必ず発生します。誰にとっても、将来必ず訪れる問題だと言えます。わからないことや不明点は積極的に専門家へお尋ねすることをおすすめします。